再びロックフェスティヴァルより帰還

Aug-17-2008
 
我が帝都、東京の空は味方につけられる菊地晴孔ことワタシですが、流石に北海道の天を味方につけるには時間がかかりまして、1曲目の「ダブ・リズ」一杯までは雨風が真正面から手荒く吹き付ける中で演奏する事に成りまして、トーンホール(サックスのキーがこう、パコパコと穴を塞いだり開いたりしますね。あの穴の事です)からどんどん水が入って来てしまうので(サキソフォンの様な木管楽器は「開管楽器」と言って、管体に穴がたくさん穿っておりますので、防水仕様になっていないのです。トランペット等の金管=閉管楽器は、正面のベル以外からは水が入って来ません)、もう何を吹いても穴の辺りでビジュジュジュジュなどと言って、しかも息を吸うと雨水がビシュといって口の中に入ってくるので、「こらアカン」と、思わず笑ってしまうのを堪えながらの四苦八苦で演奏していました。

 それでも、脳内で「お久しぶりです。2年ぶりで東京から参りました。どうか50分間だけで良いのでお鎮まり下さい。このままだとカツラがずり落ちてしまい、ショックで倒れるお客様が出ます」と唱えていたのが天に通じたか、2曲目の「オービッツ」からはぴたりと止みまして、ふー等と言って、文字通り額の水を拭い、演奏を続けました。凍えそうな気温(会場に入るなり、半パンTシャツのメンバーが皆「やばい風邪ひくよ〜。もうスーツ着ちゃおうよ〜」と言いました)と雨風の中、我々の演奏を聴きにお集まり頂いた皆様に感謝致します(演奏の途中で電気が始まり、さわわ〜と3割程のクラウドが移動しはじめたのを見て、心の中で「こっちも電気だよ〜(ちょっとだけだけど〜)。さあおいで〜」とハーメルンの笛吹きの様なことを呟いたのですが、まったく無駄に終わりました・笑・蓋を開けたら予測されたアウェイ感が全く無かったフジと野音の分、RSRにちょこっと回って来た感あり。しかし、それもまたよし。きくちなるよし)。

 一昨年の戻り飛行機はワタシの前の席に椎名林檎氏、後ろにUA氏を始めとして、貸し切りの様なJ-POP飛行機となりましたが(当欄の一昨年8月あたり参照)、今年は前席にシンゴ2氏がいらした以外は一般のお客様ばかりでした。ミュージシャン用のフードコートでは必ずいろいろと面白い光景が見られるRSRですが(とんでもなく有名なロック音楽のアーティストさんが、「ファンです」等と言って握手を求めて来たり。等々ほかにもいろいろ)、そこは流石に書けません。唯一書けるのは谷中さん(だけ)が(先乗りして)いらして「谷中さん、この間はどうも」と申し上げたら、大変ジェントルで男気溢れ、しかも少年ぽいと言うか、惚れ惚れするような対応で、約一週間ぶりの旧交を温めた。という事だけであります。「俺、アメリカンクラーベとか好きなんですよ。本当に良いもの見せて頂きまして、ムードあって凄く良かったです。凄いなあバンドネオンとか。難しそうですよ。ねえアレ」等と、あんなハンサムな人に言われては、喜ばぬ訳には行きません。

 と言う訳で、フジ、野音、RSR、と今年の夏フェス業務は総て終了。ダブセクステットは9月1日の赤坂ブリッツに、ペペトルメントアスカラールはアルバム完成に、そして我々の狂った夏は、狂った晩夏に向かいます。夏がゆっくりと、偉大な王が倒れる様に終わって行く姿は余りに美しく、痛み深く、啓示的なほどです。それではごきげんよう。