パンと葡萄酒とチーズと執筆(と「M/D」の行方)
Jun-30-2009
途中に誕生日を挟んで3つも訃報が入り(ファラ・フォーセットーーー当時はファラ・フォーセット<メジャース>の、「サンバーン」のポスターを部屋に張っていただけでなく、あの映画にはワタシのフェティッシュが余りにもたくさん、しかも高品質で詰め込まれていて、何度自慰行為に使い、その度に同時に恋したことか、貴族的な修辞でそれは、微笑ましい程の回数。だったと思います *追記/ピナ・バウシュさんがさきほど亡くなりました。ご冥福をお祈り申し上げます)、一瞬だけ中断していた慶應大学での講義録ですが、先日第一稿を提出し終えました。未だに重い喪の作業が続いていますが、喪の作業が重いのは健康的な事であります。UAさんから頂いたアフィネ・オウ・シャブリを彼女が焼いたパンに乗せ、「花と水」のA&Rであるワイン通、阿部氏(この2人は、あらゆる意味で、本当にお洒落)から頂いたクロ・ド・ヴージュの96年を飲んでいますが、我が国が誇るディーヴァが焼いたパンも、ブルゴーニュの心臓部から届けられた逸品も、とても美味しく、一瞬恍惚とするものの、いつものように、宇宙の袖に触る程は酔い切りません。
しかし、父を失った時は、いつ喪の作業に入ったかも解らぬまま、完全にうっとりとして、つまり食べ物の味は総て消えてしまい、気がつくと体重が40キロになっておりましたので(「デギュスタシオン・ア・ジャズ」のジャケット写真はそのときに撮影された物です。因に現在は58キロ)、こうして胸が重いままでも、目頭が痛いままでも、パンと葡萄酒とチーズがこれほどまでに美味しく、現実感と非現実感がこれほどまでに程よくシェイクされているのだから、誕生日の前後に大きな訃報があるというのも、ある種の乙だと考えられなくも無いだろう。などと呟きながら、続けてUAさんから頂いたシャビシュードポワトーを今度は彼女が焼いたケーキに乗せ、阿部氏から頂いたシャンボールミュジニィの96年を飲んでいます。世界で最もフェミニンだと目され、ロバート・パーカーに<完全なシルク>と評されたルビィ色は、開いても開いても、ほぐしてもほぐしても、美しく微笑んだままで、あっという間に喉の奥に消えてしまいます。それでも、泣き腫らした喉に軽くチクリとします。
慶應の講義本は、これからゲラになり、大谷君と最終チェックをして、8月に出版されますのでどうぞお楽しみに。そして一方、これが今回の、メインの話題とも言えるのですが、皆様ご存知の通り、エスクアィア・ジャパンが解散しまして、「M/D〜マイルス・デューイ・デイヴィス3世研究」は、その後いろいろあったのですが、結果としてが現在、以下の様な状態に成っております。
1)エスクァイアは会社の解散に伴い出版権を放棄。これにより、「M/D〜マイルス・デューイ・デイヴィス3世研究」は他の出版社から出版することも可能になると同時に、次の出版社が決まるまでは事実上の絶版となる。
2)在庫に関しては、既に各書店からの在庫の引き上げは終了しているため(引き上げた物は、資料用の保管冊数以外は裁断)、書店もしくは流通で意図的に在庫を残しているところ以外での入手は非常に困難。
3)また、今後の客注の対応もないので、要するに、エスクアィアが出した、あの判型の「M/D」は、<現在店頭に並んでいるものしか無い>という状況。
言わば、あのレンガの様な大著が現在<在庫一掃早いもん勝ちセール中(店頭にて)>なのだ、という事でありまして、セール中といっても、特に安く成る訳でもオマケが付く訳でもありませんので、著者としましては、そうですなあ、まあその、御興味のある方は、本自体もしくは、出版権なども、よろしかったら買ってはくださいますまいか(笑)などと申し上げる以外ないのですが(出版権が移った場合は、判型も形式もどうなろうと一切構いません。文庫の上中下巻はもとより、活字を大きくして更にアレよりデカく、「エルブリの一日」みたいになっても、辞書編纂部に引き取られて辞書そのものの形に成っても、パラパラ漫画になっても、脚本になって宝塚でミュージカル化されても)、我ながらさほど詰まらぬ本だとも思いませんので、ご一考頂ければと思います。
明日よりペペ・トルメント・アスカラール、セカンドアルバムの製作開始(先ずは作曲)と野宮真貴さんのリサイタルの音楽監督業務(先ずは全体会議)と、やや大きめのテレビ番組(「パフォー!」ではりませんが、またしてもNHKです)の打ち合わせが、連載と先生業というレギュラー仕事に被って来ます。先日、「一般の方のブログのようだけれども」というエクスキューズ付きで、今読んでいる本。を書いたら、異様に反応が良かったのでまたしても書きますが、本日(周辺)は「魅惑という名の衣装〜ハリウッド・コスチューム・デザイナー史/川本恵子」「シネキャピタル/廣瀬純」「法と芸術〜著作権法入門/小笠原正仁」を平行して読んでいます。面白い。しかし、ワタシと大谷君の慶應講義録も面白い。こんなに面白く、そしてやや頭のおかしい本を書いているのに、胸の痛みは消え切りません。ブリッコラではアンティパストに兎のマリネ、セコンディには最新の豚(どんどん移り変わるので)のグリッリアにパターテを添えて、プレゴではアンティパストにサルシッチャの煮込み(羊、鶏、豚とありますので、羊を選びましょう)、プリモにはガンベロ・オーリオのスパゲッティーニをどうぞ。そしてクレッソニエールには、渋谷「カウベル」からムッシュ北野が凱旋して来ます。ごきげんよう。
<キャプション>
関係者各位、並びにトラットリア、ビストロからの誕生日祝いの品々自慢。皆様ありがとうございます。ワイン通阿部氏からのクロ・ド・ヴージョ96年、シャンボール・ミュジニィの96年、プレゴプレゴ様からのマストロベラルディーノ・タウラージ・ラディーチ04年、渋谷コンコンブル&カウベル&新宿クレッソニエールの総支配人、杉原氏からのレ・フォール・ド・ラトゥール04年、UA様からのアソートフォルマージュと、手製のケーキとパン(出産祝いと誕生祝いのお返し)「パンドラの匣」スタッフからの巨大な花束。花束は腐食し、乾燥し、粉化し、風化して完全に消えてなく成るまで飾るのが筆者の流儀。エロやセクシーを超えて、無常観に至る。
ガンベロ・オーリオのスパゲッティーニ。ガンベロ・オーリオは大正蝦を中心に、複数の蝦の殻や味噌のエキスをオリーブオイルに移した物で、中華料理の蝦油(シャーユー)にあたる。ガンベロオーリオは金子シェフの力作で、ズッパで香り高いスタイルの石黒店長版も素晴らしいが、エキスをパスタに含ませて閉じ込め、最後に再びオイルで表面をコーティングした、縁日のヤキソバ風にドライな富博氏バージョンは、楽しくかつ郷愁をそそり、筆者は週に3皿喰ってしまった。菊地のサイトで見たがルガーナの白があったらくれ。と言うべし。
( いきなりですが、プレゴをからイタリアに旅立った、小久保くんのイタリア放浪ブログ。この店すげえなつかしー!!)
http://kkb-affascinante.blogspot.com/2009/06/blog-post_4328.html
歌舞伎町まっただ中の寿司屋にて。良い店だが紹介出来ない。理由は言わずもがな。マイケルの追悼に本鮪と岩ガキとミルガイで久保田を4合
菊地成孔の関連サイト
<菊地成孔マネージャーの速報>
http://ameblo.jp/naganuma/
このタイトルだけだと、マネージャー個人の、毎日の日記だと勘違いされてしまう方が多いのですが(笑)、菊地成孔の仕事の情報が網羅されています(いっぱいあるのでどんどんめくって下さい)。チケットや内容に関するお問い合わせ先にもなっています。
<「服何故01」>
http://ksuque.blog.drecom.jp/archive/278
菊地成孔のモード批評書「服は何故、音楽を必要としているのか?」の映像サイト(ファンの方が作って下さいました)です。これは本当に凄い。読みながら観ると、情報量が5冊分に増え、5倍お得。
<「ダブ・オービッツ特設サイト」>
http://www.ewe.co.jp/duborbits/
菊地成孔ダブセクステットのセカンド・アルバム「ダブ・オービッツ」の特設サイトです。視聴や楽曲解説以外にも特典コンテンツ満載。
菊地成孔の連載(総て紙媒体)
<フラウ>
http://watashi-frau.com/
「菊地成孔の時事ネタ嫌い」という連載で、社会時評の真似事をしております。
<ファッションニュース>
http://www.fashionnews.jp/magazine/fashionnews/
「服は何故、音楽を必要としているのか?」という連載で、パリ、ミラノ、東京のファッションショーと、使用されている音楽との関係について批評しております(この連載をまとめた物が「服は何故、音楽を必要としているのか?」です)。
<スタジオ・ヴォイス>
http://www.studiovoice.jp/studio-voice/
隔月で、ユヤマンこと湯山玲子さんとの対談が連載に成っています。まあ対談とは名ばかりで、ただ飲んで喰って喋っているだけの殿様仕事ですけれども(ウソ。校正がものすごく大変)